幻覚

泣き顔でスマイル擦り切れてシャイン踊るならレイン

君が靴の底を鳴らす音を覚えてる。酔っ払って外国人に絡んでいるのを後ろからヒヤヒヤしながら見てた。冬の日差しの中で並んだ少し汚いラーメン屋。電車に乗って横並びに座ってた。ふたりで見上げたスカイツリーには登らなかった。イルミネーションを見ることなく横切った。目の前の君が限りなく遠くにいた居酒屋の席。君はわたしより他の人をよく見てた。絶望の井の頭線。去り際のパチンコ屋。君が去った翌日に雪が降った。君の嘘を信じたかった。君のいる場所にはもう近づいていない。

ボロ雑巾なわたし

 

 

 

 名前と顔と職業と年齢くらいしか知らない男が自分の隣に横たわっている。死にたいと思っていたので何でもすることができた。唯一怖かったのは自分の将来だけで、たとえどれだけ汚されようとも別によかった。自分が綺麗で価値のあるものだなんて、サラサラ思っていなかったからだ。薄汚れた雑巾でどれだけ机を拭いても机は真っ白にならなかった。汚れた机を汚れた雑巾でいつまでも拭き続けるような、いたちごっこのような日々。誰かのために生きている、そんな当てつけのような人生こそがわたしそのものであり、もうそれ以上でもそれ以下でもなかった。

 

男は名前と年齢くらいしか知らないわたしの乳を吸っている。母性のようなものが急に湧いてきたので、わたしは彼を抱きしめた。本当はみんな誰かに甘えたいし、きっとみんな孤独なのだろうと思った。みんな大人の皮を被って、毎日戦っているのだ。こんなだらしない姿を限られた人にしか見せず、みんな大人ぶっているだけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

自分が軽くなってこの世界から消えていく気がした。

このブログをしばらく更新できなかったのも、何を書いたらいいのかさえ分からなくなったからだ。

 

思い出せないことが日々増えていく。この前まで覚えていた番組の名前が思い出せない。自分が数日前思っていたことももう分からない。楽しかったことも薄れていく。そんなことはザラだ。思春期のころの自分はもういなくて、あんなにあったマグマのような感情はすっかり消えている。なぜだろう、心が動かなくなった。

 

今のわたしは誰のことも救えないし、誰の言葉も響かないと思う。ただその事実が悲しいけど、どうすればいいのかはわからない。事実がそのまま横たわっているだけで、そこから何をしようとか、具体的な策はわからない。わからない。わからない。助けてほしい。

 

 

 

 

その場で文字にそのまま起こしたいくらい忘れたくない出来事があった。

文字で表せないくらいのたくさんの気持ちを教えてもらった。

ここでは伝えきれないくらいの思いをさせてもらった。

 

 

あんなに楽しかったのに、においは鮮明に覚えているのに、遠い日に見た写真レベルにしか思い出すことができなくなった。ここでは言えないようなこともしたから、当然かもしれない。

でも、楽しかったはずなのに胸がまだズキズキするのはなぜ?

あのころ、楽しかったけどなぜかすごく辛かったなあ。

戻りたいとは思うけど、でも戻ったらまたナイフみたいな毎日に戻ってしまう。