幻覚

泣き顔でスマイル擦り切れてシャイン踊るならレイン

ボロ雑巾なわたし

 

 

 

 名前と顔と職業と年齢くらいしか知らない男が自分の隣に横たわっている。死にたいと思っていたので何でもすることができた。唯一怖かったのは自分の将来だけで、たとえどれだけ汚されようとも別によかった。自分が綺麗で価値のあるものだなんて、サラサラ思っていなかったからだ。薄汚れた雑巾でどれだけ机を拭いても机は真っ白にならなかった。汚れた机を汚れた雑巾でいつまでも拭き続けるような、いたちごっこのような日々。誰かのために生きている、そんな当てつけのような人生こそがわたしそのものであり、もうそれ以上でもそれ以下でもなかった。

 

男は名前と年齢くらいしか知らないわたしの乳を吸っている。母性のようなものが急に湧いてきたので、わたしは彼を抱きしめた。本当はみんな誰かに甘えたいし、きっとみんな孤独なのだろうと思った。みんな大人の皮を被って、毎日戦っているのだ。こんなだらしない姿を限られた人にしか見せず、みんな大人ぶっているだけなのだ。